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やよい軒の秘密 7

和洋折衷の定食。やよい軒のルーツはここにあり。

 私たちがやよい軒で何気なく囲んでいる定食の真ん中には、百四十余年もの歴史を紡いできた偉大なルーツが隠されています。その始まりは、文明開化の熱気に沸く1886年、東京・茅場町に誕生した西洋料理店「彌生軒」にまで遡ります。当時の日本では最先端だった西洋料理の技術を取り入れながらも、日本人の味覚や暮らしに寄り添う「和洋折衷」のスタイルを確立したその店には、激動の時代を生き抜いた勝海舟ら歴史の偉人たちも足繁く通ったと伝えられています。異国の新しい知恵を柔軟に取り入れながら、日本伝統の美意識と見事に調和させてきた、やよい軒の根底に流れる革新とおもてなしの物語を紐解きます。

 明治という時代は、日本の食文化にとって極めて大きな転換期でした。それまで経験したことのなかった西洋の食習慣や食材がどんどん流れ込む中で、先人たちはそれをただ真似るのではなく、自分たちの文化とうまく融合させる知恵を発揮したのです。和食文化の特徴には「多様で新鮮な食材の尊重」や「健康的な食生活」が挙げられますが、これらは外来の食文化を受け入れる際にも強力なフィルターとして機能しました。その黎明期において、新しい食のあり方を世に提示したのが「彌生軒」だったのです。当時の最先端である西洋料理の技法をベースにしながらも、ごはんに合い、日本人の心にじんわりと染み渡る味わいに仕立てる。この和洋折衷の精神こそが、今につながる日本の定食文化の礎となりました。

 勝海舟がお店を訪れ、新しい時代の息吹が吹き込まれた料理に箸を運んでいた――そんな歴史のロマンが、やよい軒のバックボーンには確かに息づいています。西洋の合理性と、和食が古来より育んできた繊細な技術。その2つが幸福な出会いを果たしたからこそ、毎日食べても飽きることのないモダンな日本食が誕生したのです。

 140年あまり前に茅場町で産声を上げたこの精神は、現代のやよい軒のメニューラインナップにも色濃く受け継がれています。お盆の上に並ぶのは、伝統的な和食である焼き魚や煮物だけではありません。じゅうじゅうと音を立てるジューシーなハンバーグやステーキ、サクサクのトンカツなど、現代人が大好きな洋食やモダンなおかずもまた、炊きたてのごはんと温かなみそ汁、そしてだしの効いた小鉢とともに「一汁三菜の定食」という美しいシステムの中に調和しています。これこそが、彌生軒から脈々と受け継がれてきた「和洋折衷」の遺伝子そのものなのです。

 時代が移り変わり、テクノロジーが進化しても、温かで栄養バランスの取れた食事を通じて人々を笑顔にしたいという想いは、明治19年から変わりません。今日も来店されるすべてのお客様に、歴史のロマンと、変わらないおもてなしを丁寧にお届けします。