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やよい軒の秘密 9

今や冬の風物詩。 “1人鍋”という新しい楽しみ方。

 木枯らしが吹き、肌寒さが身に染みる季節になると恋しくなるのが熱々の鍋料理。かつては家族や仲間と大きな鍋を囲むのが当たり前だったこの日本の冬の食文化に、やよい軒は新しいスタイルを提案してきました。私たちは、1人用の鍋料理を定食という形にして導入し、“1人鍋”という楽しみ方を広げてきました。90年代後半から冬季限定としてスタートした、すき焼きやチゲの定食。当時は斬新だった1人用の土鍋での提供は、多くのお客様に新鮮な驚きをもって受け入れられました。誰にも気兼ねすることなく、自分だけの熱々の鍋を心ゆくまで堪能する。そんな現代の冬の風物詩となった1人鍋に込められた物語を紐解きます。

 日本の冬において、鍋料理は単に体を温めるための食事というだけでなく、人々が集い、暖を分かち合う「団らん」の象徴でもありました。和食文化の特徴として「年中行事との密接な関わり」や「自然の美しさや季節の移ろいの表現」が挙げられますが、まさに鍋料理は日本の冬を豊かに表現する食習慣のひとつです。しかしライフスタイルが多様化し、個食化が進む現代社会において、なかなか鍋料理を食べる機会がないという状況が生まれてきました。やよい軒はこの変化に着目し、誰もが気軽に、いつでも楽しめる「1人鍋定食」というスタイルを展開してきました。

 90年代後半にこの試みが始まった当時、テーブルに「1人用土鍋」が並び、目の前でグツグツと湯気を立てている光景は、非常に新鮮で斬新なものでした。お肉や野菜が鍋の中で踊り、じんわりと味が染み込んでいく様子を視覚と聴覚で楽しみながら、ふうふうと息を吹きかけてひと口すする。この五感に訴えかける食体験は、多くの人の体だけでなく、心も解きほぐしました。

 今では誰かと予定を合わせなくても、ふらりとやよい軒に立ち寄れば自分だけの贅沢な冬のごちそう鍋を楽しむことができます。外食における選択肢のひとつとして定着してきた1人鍋というスタイル。やよい軒はこれからもお客様一人ひとりの食の時間に寄り添いながら、妥協のない美味しさを追求し続けます。今年もあなたの冬のひとときを、熱々の土鍋でお腹の底からやさしく温めます。